有機化学の勉強法(研究室の学生向け)

まず有機化学の研究室の学生には

とにかく時間がない!コアタイム

は午後5時までとかになっていても

実際家に帰るのは22時以降とかざらだ。

その上土日はゼミの準備などもある。

そんな中で勉強していくためのやり方を

記事にしたい。

まずよくブログとかに書かれている勉強法は

ウォーレン有機化学の上下巻を制覇し、

演習で学ぶ有機反応機構をB問題までやり、

大学院講義の教科書を読破するみたいなやつが

多いがそれをこなせる暇人などいないw

博士課程まで行く人なら終盤で

やり切ることが出来るかもしれないが

知識不足に苦労する修士のうちに

ある程度は付け焼き刃でもいいから

知識をつけることを優先した方がいい。

俺のここに綴る勉強法は付け焼き刃の

知識をつけるためのやり方である。

使う教材はただ一つだ。

 

『天然物の全合成 2000-2008

有機合成化学協会編』

 

この本には天然物135個の全合成スキームが

ただ羅列してある。それを使った勉強法を

以下にまとめる

 

1 各反応の機構を考える(わからない試薬

や条件は検索する)

 

2 検索して出てくる情報を記憶

 

3全体の反応を理解できるようになったら

各反応の条件(試薬や溶媒)に

気を払って記憶する

 

基本的にこの手順を各合成例について

こなしていく。この手順でこの本を

消化する事で多くの例を知ることができる。

有機化学の勉強は英語の勉強と似ていて

理屈以上に慣れがモノを言う世界だ。

その慣れと経験を積む手っ取り早い方法が

実際の合成例で勉強する事と言える。

何例もこなしているとよく出てくる

人名反応や反応条件も記憶できるようになる。教科書で理屈を詰めるのは知識の

ストックをつけてからの方が楽なので

ウォーレンより天然物の全合成の本で

とにかく多くの例を記憶するのが望ましい。

それにわからない反応はググると思うが

ググって出てくる情報の方が教科書より

何百倍も分かりやすいのでその情報で

記憶する方が楽でいい(特に検索で引っかかる

ケムステの記事がわかりやすい)。

 

あと反応機構にこだわりすぎる必要はない。

楽勝な反応の機構を詳細にノートに書く時間は

無駄だし、それなりに正しい機構が

推定できれば困ることはない。

演習で学ぶ反応機構も売っているが

あまりにその勉強にこだわり過ぎなくて良い。純粋に反応だけを見てどこの結合が

切れてどういう結合を形成したかを

なんとなく見抜く能力も大事なので

いちいちノートに事細かく機構を描かないと

何がおこっているのかわからないと

いうのも困り物だ。

 

また各反応の条件を記憶する行為も

それなりに役立つ。同じ反応を仕込む

場面が来るかもしれないし、

こういう反応の時はこういう温度で

こういう溶媒を使うと言った条件は

それなりに定石が決まっているからだ。

全部が重要とは限らないが分子変換の内容

のみならず反応条件にも気を配って

眺めると一石二鳥と言える。

 

難しい機構や調べたポイントは簡潔に

ノートに記録しておくと2回目以降の

復習で調べ直す手間がなくなるのでお勧めだ。

あと引用元の原著論文は見なくていい。

時間の無駄なので、調べて考えてわからない

込み入ったことはスルーしようw

 

この勉強法は全合成屋に特におすすめだ。

逆に反応開発屋であれば多くの反応に

関する知識を必要としないので

むしろ反応機構をベースに有機化学

勉強する方がいいのかもしれないが。

 

以上有機化学の勉強法の紹介でした!